どうでもしか勝たん

格が違うので卍卍卍

時系列解析(ARモデルからARCHモデル)

AR(AutoRegressive)モデルをご存知でしょうか。

アクチュアリー試験モデリング分野でも登場する、時系列解析では代表的なモデルです。

AutoRegressiveを和訳すると「回帰」ですが、その名の通り、「予測したいデータを過去のデータ(と確率的な撹乱項)によって説明する」というコンセプトになっております。

具体的に考えてみましょう。今回は時刻tでの金融商品の収益率Y_tが過去のデータによって説明できるという立場で考えるので、以下のような式になります。

Y_t=\theta_0+\theta_1Y_{t-1}+\theta_2Y_{t-2}+\cdots+\theta_pY_{t-p}+\varepsilon_t

ここでは過去pステップに渡って参照していますのでAR(p)と書いたりします。

パラメータ推定の方法やモデル選択(AR(1)なのかAR(2)なのか)という話は省きます。

気になる方はこの書籍をどうぞ

ボラティリティ変動モデル (シリーズ 現代金融工学)

ボラティリティ変動モデル (シリーズ 現代金融工学)

 

 

細かい話は置いておいて、このモデルをいい感じに使って未来の収益率を予測できたらめでたしなわけです。

 

しかし、世の中そんなに甘くはありません。

実際にこのモデルで収益率をモデリングしてもなかなか上手くいきません。このモデルの応用であるARIMAモデルなどを使っても同様です。

ARモデルなどはモデルの残差(過去データから説明できない部分)をホワイトノイズで仮定していますが、実際の金融市場では残差はホワイトノイズではないことが確認されています。

この背景としてボラティリティクラスタリングというものがあります。

市場へのショックなどで一時的にボラティリティが高まると、しばらくはその状態が続くというものです。言い換えると、ボラティリティは過去のデータに引きずられるというわけです。

もうやることは明確ですね。収益率ではなく、収益率のボラティリティモデリングすればいいのです。

これがARCH(Autoregressive Conditional Heteroscedasticity)モデルです。日本語では、「分散自己回帰モデル」「分散不均一モデル」とか言ったりします。

前回と同様に時刻tでの収益率Y_tを予測します。トレンド\mu_tは時刻t-1までの期待値をそのまま推定量として用います。

すると残差\varepsilon_tを用いてY_t=\mu_t+\varepsilon_tという式になります。

ARCHモデルは本質的には「期待値からの残差を予測する」モデルとなります。残差の中身について考えていきましょう。

この残差は確率変動項になりますので、ホワイトノイズz_tを用いて\varepsilon_t=\sigma_tz_tと表せます。

そしてボラティリティ\sigma^2_tを以下のように過去のデータ(残差)を用いてモデリングします。

\sigma_t=\omega_+\alpha_1\varepsilon^2_{t-1}+\alpha_2\varepsilon^2_{t-2}+\cdots+\alpha_m\varepsilon^2_{t-m} 

式の中身から明らかなように\sigma_tは時刻t-1までのデータだけで確定的に表されます。これによってY_tの予測が可能になるわけです。