デュレーションについて一言物申したい
少しご無沙汰しております。
今回は前回までとは違い、債券数学的なトピックでお送りします。
固定利付債についてデュレーションという指標を考えることができます。日本語で言うと平均残存期間。
例えば天下の野菜証券の証券用語解説集を参照すると、4文目で「債券投資の平均回収期間を示している。」と書いてあります。
ぶっちゃけこの定義意味不明ですよね。債券はどんな時にも満期でようやく回収完了だし。
だけど、もう少し話の続きがあって。もう少し読むと「債券投資の平均回収期間を示す以外に、金利がある一定の割合で変動した場合、債券価格がどの程度変化するかを示す感応度の性格ももっている。」という記載もあるわけです。
ようやくまともそうな定義が見えてきました。本記事ではもう少し厳密にこれら2つの定義について見ていこうと思います。
この記事で使う債券、およびデュレーションの定義を以下に記載します。ここでは連続複利を考えますが、実際上は半年複利が使われるので、修正デュレーションなる概念が存在するのですが、今回は省略します。
とある債券に対して、その保有者が時間に受け取るクーポンをとします。イールド(簡単のために各期間に対するゼロ・レートを用いることはしない!!)をとすると、債券価格は
と表されます。
また、デュレーションDは以下のように定義されます。
さて、諸々の定義が終わったところでここからは愚痴です。
平均残存期間なんて考えて誰が得するのって話
"""
愚痴始まり
デュレーションの定義自体は難しくないです。については各クーポンの現在価値を債券価格で割ることで、そのクーポンが占める割合を出しています。
それらにを掛けて総和を取っていますが、言ってしまえば期待値を取っているようなものでしょう。確率密度関数をとる確率変数に対して期待値はですからね。
気に食わないのは、「平均残存期間」などと言う名称を名乗っているところです。
先ほども申し上げた通り、例えば満期3年の債券のデュレーションが2.8年だったとして、平均的に2.8年でクーポンが全額支払われるわけではありません。期待値(平均値)を取るような操作をしたからと言って、このような誤解を招きやすい名称をつけるのは如何なものかと思います。
愚痴終わり
"""
さて、「平均残存期間」なる定義が本質的に意味不明(だし、こんな指標を誰が利用したいと思うのか)ということを述べてきましたが、「金利感応度」という定義の仕方を考えてみると、話は変わってきます。
金利感応度って金利リスクを管理する上で重要じゃね?って話
債券を保有する投資家を考えると、彼らは金利が動いたときにどのくらい得(もしくは損)するのかということを考えたくなります。つまり、金利リスクです。
数学的に表すと
みたいなことが気になるわけです。
ここで債券価格はイールドについて陽に書き表せますので、微分を考えることもできるわけで
というように表せます。
あれ???
これってなんじゃねーの???
もう少し言うなら
つまり、金利が y(%)動いたときの価格変動率(%)はと表されるよということ。
というわけであります。
結論として一言物申す
デュレーションについて、第一義的な定義として「平均残存期間」を、そこから派生する性格として「金利感応度」があるという書き方は理解の妨げになると思います。
正しく書くなら、デュレーションとは、金利リスクを管理したい投資家にとっての(いわゆる微分係数的な)「金利感応度」を表す。という風にするべきでしょう。
今回はこの辺で!