猫でもわかるリスク中立化
オプションプライシングを理解するにあたって避けては通れない概念にリスク中立化があります。
先日この辺で詰まったのち、試行錯誤して理解を得たので、備忘録も兼ねて記載します。
ではいきましょう。3つのステップに分けて説明いたします。(用語・具体例等はJohn Hull本の第13章に従っています)
1.リスク中立な世界では、投資家は期待収益率のみを見て投資する
まず、リスク中立という言葉の意味を正確に定義します。
この記事の終着点はオプションプライシングですが、しばらく(トピック1,2)では株式を含めた任意の投資行動について考えます。(←ここ意外と大事)
人間は一般にリスク回避的な存在と言われています。投資Aと投資Bがあったとして、その期待リターンが等しいと分かっているなら、よりリスクが低い方を選ぶはずです。
しかしここではリスク中立、つまりリスクの大きさを気にしない投資家によって構成される世界を考えます。この場合、先程の例で挙げた投資Aと投資Bはどちらも同じ程度選好されるというわけです。
このように、リスク中立な世界では人々が(リスクの大きさを見ずに)リターンの大きいものから順に投資していきます。
しかし、これを無限に繰り返すとどうなるでしょうか?リターンの大きな投資は参入コストが高くなるに従ってどんどん旨味を失っていきます。
2.任意の株式の期待収益率は無リスク金利と等しい
その結果として得られる(やや逆説的な)結論が「任意の株式の期待収益率は無リスク金利と等しい」というものです。
これを数式で表現します。記号は以下を用います。投資期間を考え、その間に株価が上昇すると倍に、下落すると倍になると仮定、そして無リスク金利をとします。
(リスク中立世界での)株価の上昇率をとすると以下の式が成り立ちます。
これを解いて
というようにリスク中立確率を求められます。
3.とある株式を考えるときに、コールオプションの期待収益率も無リスク金利と等しい
さて、この株式のコールオプションも投資行動の一つなので、リスク中立世界の下で、その期待収益率は無リスク金利と一致します。
ではコールオプションに対しても同じ操作をしてみましょう。
コールオプションの価格を、株価上昇時のペイオフを、下落時のペイオフをとします。ペイオフ[¥]をリターン[%]に変換するとそれぞれとになります。先ほどと同じ株式を扱っているので、同じリスク中立確率を用いることができ、コールオプションの期待収益率は以下のように数式表現できます。
式変形するとコールオプションの価格が求まります。
ここに先ほど求めた求めたを代入すると、コールオプションは以下のように書き換えられます。
これはなんと(?)複製によって得られたコールオプションの価格と等しくなり、オプションの世界ではリスク中立確率をまるで株価の上昇率かのように扱うことができることがわかりました。
ここまで細かくステップ分けすればリスク中立化も理解できるかなって思います。
P.S. はてなブログのTeX記法で指数を表すのどうやればいいんですか…知見がある人教えてください(\exp{hoge}じゃできなかった)